古草紙昭和百怪

「呪いの恐怖 田舎の怪談 都会の怪談」(「話のタネ本」 昭和40年)

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 正直に申せば、一般週刊誌には全く無縁で過ぎて来た身。今になって、斯道に手を染めるとは思ってもゐなかったので、類縁記事の掲載状況も皆目見当が付きかねました。例へば小池壮彦「『事件』になった戦後の怪談・奇談年表」(平成7年)には週刊誌を出典とする記載も多く、一方で今野円輔や室生忠の刊本にも引用が散見されるものの、とても概観までには及ぶべくもありません。
 そこで、「大宅壮一文庫雑誌記事索引総目録 件名編」(大宅壮一文庫 昭和60年)を覗いてみると、「オカルト、心霊術」なる大項目の他、「科学」には「宇宙人、空飛ぶ円盤(UFO)」「奇生物一般」「ネッシー」「雪男」なぞも見付かり、一挙解決かと小躍りを。ところが、糠歓びに過ぎないと悟ったのは、所蔵誌にかなりの偏りがあるのに気付いたから。最も興味がある昭和30年代からの十年間が、意外に抜けてゐたに併せ、実話何々といった体の所謂、赤雑誌と見做される類は同館でも閑却に付される嫌ひが否めません。以上が此度、門外漢が及ばずながらも紹介を思ひ立つ所以です。
 表紙を垣間見た験すら無い雑誌に言及するだけでも、無責任の誹りは免れないのですが、更に困った事に、誌名すら覚束ない有様。今回の「話のタネ本」も、印面余白に「MANGA 話のタネ本」と誌章(ロゴタイプ)の印刻があり、こちらが正式な呼称なのかもしれません。因みに、冒頭頁の裏が目次ゆゑ書き添へておけば、立川談志「談志専科」、井上一夫「随筆007」、加太こうじ「ギャンブル専科」の連載の他に読物が9本、対する漫画は12本。少年誌同様、漫画雑誌を標榜してはゐても未だ読物記事が幅を利かせていたのでせう。
 「納涼特集 呪いの恐怖 田舎の怪談 都会の怪談」(昭和40年7月27日号 12~18頁)は、「湯殿に現われた男の片腕」「水底に引き込むものは」「その顔は火で焼けただれていた」「浅草の裏町をさまよう乱れ髪の女」「死人をよみ返らせた男」の5篇。画像13点。就中、第1挿話「ダイナマイト自殺した男」の現場写真掲載は、往時ならではの賜物かと。

 

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「新恐怖シリーズ 第1話 幽霊は赤い鼻緒の下駄をはいていた」(「週刊平凡」昭和41年)

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 改元よりこの方、顧みると既に、昭和四十年代前半の刊本まで「著作権保護期間」が終了。丁度頃合ひ、お化けを扱ふ雑誌切抜を大量に落掌したのも手伝ひ、新たに「古草紙昭和百怪(ふるさうしせうわのひゃっくゎい)」と題し、主に週刊誌掲載の記事紹介を試みたく。但し、執筆者や画家の「保護期間」が存続する場合も多いので御留意を。
 まづは今野円輔「日本怪談集 幽霊篇」でも巻中の白眉と見做せる有名奇譚を。「科学者西丸震哉氏の不思議な体験」と柱に大書した、「新恐怖シリーズ 第1話 幽霊は赤い鼻緒の下駄をはいていた」(「週刊平凡」昭和41年 さしえ三井永一 106~10頁)は、釜石での標題篇の他、人魂目撃を二例。なほ「…ひとりの女が投身自殺した。…発見されたとき、赤い鼻緒のゲタは、崖の上にきちんとそろえてあったという。」と本文にあるばかり、この惹句通りではないので念の為。言ふまでも無く、前年に上木を見た「未知への足入れ」(東京創元社)からの抄録と推測できますが、宣伝の恰好の機会だったにも拘らず、単行本への言及は皆無なのが不思議です。
 因みに家蔵の切抜には「1966年8月」と記入があるのみで、掲載号は不明。いづれも記事そのものは未見ながら、国会図書館「デヂタルコレクシヨン」で検索した所、「新恐怖シリーズ」二回から五回は判明しました。

8卷33号 新恐怖シリーズ(2) 銀座に誰もいなくなったとき
8卷34号 新恐怖シリーズ(3) 死んだ山男が呼んでいる
8卷35号 新恐怖シリーズ(4) あつ 自殺したアラさんが!!
8卷36号 新恐怖シリーズ(5) 暗い沖から遭難者の声が

 32号は同館欠本、遡って十冊程の目次を覗いても見当たらないので、連載第一回目掲載は同号と推定。頭に「新」と付くからには、先行する連載があったのかも気になる所です。

 

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