「古文書に取組む武内宿禰67代目の子孫」(「週刊実話特報」 昭和36年)
偽史偽典は内容は二の次、関心は派生した事件や人物誌に限られます。連載記事と思しい「奇人変骨ぱとろーる」第一回は、「古文書に取組む武内宿禰67代目の子孫」(「週刊実話特報」 昭和36年11月27日 30~33頁 写真5点 双葉社)。
武内宿禰の「子孫は代々神官の役についていたと史にある。…武内家は竹内と名を変え、代々越中の…宮司をしていた。…、ことに武将の信仰の対象として有名だった。武将は、出陣する前に、必ずこの神社に祈祷文をあげたという。」昭和11年、「当時文部省に"皇統は神武以前にさかのぼらず"という規定があり、これにふれるので、…、竹内巨麿翁は、不敬罪で告訴された。」「陸軍軍人は、当時この文献が出たことに大悦びしたのだった。…。そこで、『遊就館へ陳列したい』と翁に申し入れてきた。…。『もし、本物という鑑定が得られれば、陸軍へ献納しましょう』だが、この文献が広まって、文部省の規定内容をぶちこわすことを恐れた政府は、翁を告訴…。」昭和17年の一審判決は有罪、19年大審院の「三宅正太郎裁判長の判決が…『人間が神を裁くことはできぬ』…。…、翁はついに無罪。同文献は証拠物件として大審院に一部」が「保管されたが昭和二十年の大空襲で、その一部は惜しくも焼失した。」
「現存する竹内巨麿翁は…六十六代目」「お子さんは東京にいる長男…のほかに、次男…が東北大の教授、三男…が、自動車修理業…。」「…長男…は、現在東京の中央区で食堂を経営している。」とあるものの、長男の写真のみ掲載。巨麿本人及び親族の談話は一切ありません。恐らくは、その紹介に記事の一節を割く「研究家の変り種、聖竜丸本舖主人」に拠ったのでは。同氏はさる製糖会社「の重役という財界の元老格…。柔道七段で三船十段に手をとって教えたという人だ。…。ピラミッド見物に出かけて、酒井勝軍氏(英人モルトン・エドガー"ピラミッドの正体"の翻訳者と出会った。」先の「食堂」では、「同氏を中心に、定期的に学者や外人までまじえた研究家が集まって、…研究会を開いている。」
「モーゼ留学説については、竹内家に十戒石とオニックス(縞めのう)が残っていたという。オニックスはユダヤ民族が血眼で探しているユダヤの象徴だというのだ。だが、残念なことに、これは大審院に保管され、いずれも例の空襲で、焼失してしまった…。ところが、現在元海軍大将某氏らが、四国の剣山」で「秘宝掘りをしているが、ぞくぞくとユダヤやソロモン王の彫刻や、…食器などがでてきて、同文献に記されている事実が、証明されてきているというのだ。」この軍人は山本權兵衛の縁戚に連なる山本英輔らしいのですが、昭和11年に早くも予備役編入、36年まで存命の由。
他に興味深い条を挙げると、「…おなじような古文献が、秋田県境町の唐松神社にもあるという。この神社は、物部氏の後裔」に関はるとか、「以前、南米のボリビアの王の古墳の中から、象形文字で書かれた古文献が発見された。世界中の考古学者が、…調べたが、どこの国の古代文字か分らない。そこで各国に」照会「したら、竹内文献中にある古代文字とぴったり一致するので驚いたというのだ。」
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