「新恐怖シリーズ 第1話 幽霊は赤い鼻緒の下駄をはいていた」(「週刊平凡」昭和41年)

 

 改元よりこの方、顧みると既に、昭和四十年代前半の刊本まで「著作権保護期間」が終了。丁度頃合ひ、お化けを扱ふ雑誌切抜を大量に落掌したのも手伝ひ、新たに「古草紙昭和百怪(ふるさうしせうわのひゃっくゎい)」と題し、主に週刊誌掲載の記事紹介を試みたく。但し、執筆者や画家の「保護期間」が存続する場合も多いので御留意を。
 まづは今野円輔「日本怪談集 幽霊篇」でも巻中の白眉と見做せる有名奇譚を。「科学者西丸震哉氏の不思議な体験」と柱に大書した、「新恐怖シリーズ 第1話 幽霊は赤い鼻緒の下駄をはいていた」(「週刊平凡」昭和41年 さしえ三井永一 106~10頁)は、釜石での標題篇の他、人魂目撃を二例。なほ「…ひとりの女が投身自殺した。…発見されたとき、赤い鼻緒のゲタは、崖の上にきちんとそろえてあったという。」と本文にあるばかり、この惹句通りではないので念の為。言ふまでも無く、前年に上木を見た「未知への足入れ」(東京創元社)からの抄録と推測できますが、宣伝の恰好の機会だったにも拘らず、単行本への言及は皆無なのが不思議です。
 因みに家蔵の切抜には「1966年8月」と記入があるのみで、掲載号は不明。いづれも記事そのものは未見ながら、国会図書館「デヂタルコレクシヨン」で検索した所、「新恐怖シリーズ」二回から五回は判明しました。

8卷33号 新恐怖シリーズ(2) 銀座に誰もいなくなったとき
8卷34号 新恐怖シリーズ(3) 死んだ山男が呼んでいる
8卷35号 新恐怖シリーズ(4) あつ 自殺したアラさんが!!
8卷36号 新恐怖シリーズ(5) 暗い沖から遭難者の声が

 32号は同館欠本、遡って十冊程の目次を覗いても見当たらないので、連載第一回目掲載は同号と推定。頭に「新」と付くからには、先行する連載があったのかも気になる所です。

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「明治期怪異妖怪記事資料集成」補遺 追記

 蜿蜒と続けて参りました「明治期怪異妖怪記事資料集成」補遺、当方の手の届く範囲での穴埋めは前回にて完了しました。残る判読不能箇所を以下に。(冒頭の数字は、明治年・月・日。以下、記事の略称・不明箇所・行数)
 
120820 狸 朝日 冒頭
160905 人力車 朝日 したドン… 行末8行 …ぬより
340424 古木 報知 我が命も… 4行 …んと云って
340504 妖怪 報知 薄気味… 1行 …狸ならず
340524 大尉 報知 無頓着な… 8行 …(との怪物) 立向ふ
340812 魚籃 報知 ならぬと… 5行 …○を取調べ
341208 妖火 報知 覚して見る 7行 …るに次郎吉
380829 生霊 一 報知 こんなものであらう 9行 催眠術を種々奇なる
380830 同上 二 報知 運動を全く… 4行 …精神が
380928 祇園 神戸 一杯傾け… 2行 …て居る
390905 歌を謡ふ魚 讀賣 を占め、身体はまるですツこけて… 12行 …下半分
410508 死神 報知 稀代の… 2行 …けて夫婦とも
410603 幽霊研究會 新潟東北日報 有名な科學の先… 6行 …て、御當人
410705 幽霊蚊帳 九州日の出 死体など我… 2行 …り、幽霊に
411105 土地で 國民 疎い何時しか… 5行 …て死亡
420126 幽霊の浜風 北陸タイムズ 大石小石と共に… 2行 …の海何れに
420324 古狸 報知 切断され其… 4行?
420428 怪猫 朝野 扇子を持って… 3行? …○口までは *同内容記事あり
420627 蓑谷の怪物 北陸タイムズ 冒頭 7行? なりき全村
420629 蛇の執念 北陸タイムズ 願ひたるも 5行 ると之
420707 怪談骸骨 東洋日の出新聞 人骨の話を… 15行 …買手は案外 / 十七個は… 3行 終
430408 執念の蛇 紀伊毎日新聞 冒頭 大流行の芝居… 2行 …流行し
430615 水鬼 臺灣日日 ○克船が帆を… 8行 …何れにも
430616 十年幽霊 同上 夜毎夜毎に背信?る… 14行 …を聞くに是も *以下、「臺灣」は全体に不明箇所多
430617 同上 二 同上 ○水川にて… 16行 …○みに来るも
430621 同上 三 同上 来るもの多しと… 9行 …属する筈
430622 同上 四 同上 幽霊に吉凶を占… 8行 …寸信じ悪い話
430724 署長官舍 両野新報 前任者たる川… 9行 …るべしなど
431115 狐祟り 國民 *同様記事
440531 黒煙 滿洲日日 立ち登… 1行 …太さとなり
450723 紅魚 臺灣日日 を伺ひしに○○… 17行 …しくして上り

 これに難読箇所を含め、爾後の補綴に確認を要する紙名は、ざっと以下の通り。

判読不能照会 北陸タイムズ 東洋日の出新聞 九州日の出新聞 山陽新報 紀伊毎日新聞 神戸新聞 名古屋新聞 両野新報 朝野新聞 臺灣日日新聞 報知新聞 國民新聞 讀賣新聞 朝日新聞(明治21年以前)

難読箇所照会 九州日報 中國新聞 伊勢新聞 佐渡毎日新聞 藝備日日新聞 新下野 (復刻有 朝野新聞 時事新報) 

 折に触れ覗く限り、続刊「大正期」に目立つ僻は無い様子。なほ本書未掲記事の増補については、篤志の方が全文翻刻を web log「古新聞百物語」に連載しておられます。

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「都新聞」 明治44年10月

 「明治期怪異妖怪記事資料集成」補遺、今回は各行、…で囲むか、以降の数字のみ。(「『都新聞』復刻版 明治44年9月~10月・第8451号~第8511号」 柏書房 1999年)

明治44年10月29日 怪談忍川の幽霊(上) (前妻の祟りと神様のお告げ)
頃蓑村利左衞門が全盛時代八丁… 堀龜 …島町
にお力といふ圍ひ者をして居た… 頃蓑 …村の
家に出入する増田研藏といふが… 近所 …に住
み、お力の小間遣ひに使つて居た… 腰元福
井おたつといふを増田家の長女となし
更に婿養子の何某を迎へて増田家の跡目
相續をなさせる筈であつた… 所、養子は身

持放埓で… 

「豆腐料理で賣つた」「料理店しのぶ川」を買取った主人が、「發狂し家を壊すのイルミネーシヨンを點けるのと取止めもない大言壮語を」始めた。この「突然の發狂は…、臺灣で無殘の最期をとげたる前の女房おたつの亡魂が祟って居る…」との噂が。果して、真相は。

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「都新聞」 昭和44年8月

 厳かな御代替りの当日なれど、相も変らぬお化けです。(「『都新聞』復刻版 明治44年7月~8月・第8389号~第8450号」 柏書房 1999年)

明治44年8月3日 妖怪の正体
…臺所の

屋根の邊で怪しい音がしたので行って見
ると引窗から年頃は四十二三の痩せに痩
せた男が半分身體を出して覗き込んで居
たので青くなり其の翌日早々其家を退却

し家を畳んで…

…聞いた人

の噂の數々辿つて見ると此に悲惨な物語を
聞き出した▲今年は二月春未だ寒き頃
此家に永く住み馴れた富山縣人石野安太郎
(四十一)とて東京瓦斯會社の土工が居た女房
お蔦(三十八)を大塚火藥製造所の女工に通は
せ夫婦共稼ぎで僅かに煙を立てゝ居たが安
太郎は頗るのお人好し、お蔦は打つて變
つた阿婆擦れ女、是まで亭主を取替へた

事數知れず…

 先月観た日生劇場「笑う男」、ウルシュスの見世物一座でも背高のっぽが目立ちましたが、高女や伸上りの類とも取れるかと。高所から見下ろす構図は、幽魂表現の型の一つと言へませう。改元に因み敢えて帝紀に類例を求めれば、齊明帝の御宇、例の笠を被った鬼にも顕らか。

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「萬朝報」 明治44年

 「明治期怪異妖怪記事資料集成」補遺、「お化け長屋」。だらだらと続いた因縁譚も今回でをはりです。

明治44年7月31日 お化け長屋(十三) 便所で縊死した婆さん

…多かつたが、

何うした因縁やら、兩人ともまだ綻びぬ
蕾の花を、肺と云ふ忌な病に冒されて、
無慘にも相違へて此世を去つた
  ▽殺された請負師の親方▽
今から四年前、阿部と云ふ興行師の親分
が此横町に住んで居た、靖國神社の祭禮
に縄張り争ひから大喧嘩となり遂に
對手の為に出刃庖丁で突殺された、その
時にもお化長屋の黒ずんだ板堀に、物
の怪が現はれたと云ひ傳へて居る
  ▽お化の為の移轉でない▽
山下部孫三郎ハ、千五百圓の小資本が此
處へ質屋を開店しており、今では萬餘の
家を作り今夜移轉した根岸の家も、付
屬の貸家に取圍まれた自分の所有家作で

ある、世間の人から…

 更に「本年五月、…、お化質屋の裏に住む油商秋野伊三郎の妻が、…、無慙の最後を遂げた事がある、お化横丁に年増女の幽靈が出ると云ふ噂の立つたのハ、即ち此れが動機である、」

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「萬朝報」 明治44年

明治44年7月29日 お化け長屋(十一)夜な夜な悪夢に襲わる

 「明治期怪異妖怪記事資料集成」補遺、「お化け長屋」。「半四郎、お俊に就いての怪談ハ、前の住人松浦新兵衛の非業の死と相俟つて、一層凄さの度を加へた、越えて廿九年、…、銀行家で失敗した村上芳雄と云ふ人」

…が浅草向

柳原から引越して來た『何うせ永くハ續
くまい』と同近の人ハ私(ひそ)かに囁き合つて
居たが、一年ばかりで又空屋となつたの
で、『愈よお化が出るんだ』と噂が立つた
  ▽土藏の梁で首をくゝる▽
その後暫く空いて居たが、深い事情を知
らぬものハ家賃の廉いのに飛付く、伏見
鶴吉(三十二)と云ふ男が此地へ引越して來て
又も質屋の看板を掲げた、けれどケチの
付いてゐる家だけに、氣味惡く思つてお
客樣ハ一向に來ない、『これでハ幾ら家賃
が廉くたつて商賣にならぬ』と鶴吉ハ
首を傾ける、日に日に食ひ込む、元來氣
の小さい男だけに、間もなく精神に異常を

を呈して、あらぬ事を…

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「萬朝報」 明治44年

明治44年7月25日 お化け長屋(十)貞節な妻が心尽くしの看病

 「明治期怪異妖怪記事資料集成」補遺、「お化け長屋」。十回目にして漸う「お化け」が登場します。
 記事冒頭から。

  ▽貞節な妻が心盡の看病▽
自分の命より大事に思ふ夫の病氣が
不治惡症で、永いことハないと、最後の
宣告を醫師から與へられたお俊ハ、身も
世もあられぬ思ひで泣き悲しんだ肺病ハ
忌な病氣だと聞いて居る、けれどお俊ハ
それが為に天下に愛想を盡かすやうな薄情
な女でハなかつた、日夜精根を盡して看
病に勤め、手を換へ品を換へて出來得る
限りの治療法を講じ、また店の方ハ、人
手も借りないで自分で家業を切て廻した

のである (…)  

…物淋しい、下女

の鼾が微かに次の間から聞こえる、と見
る、佛壇の前、香の煙りの淡く立籠めた
あたりに、不思議や、亡き夫(つま)の姿が影の
如くあらはれた、お俊ハ因(もと)より氣丈な
女、怖いと云ふよりハ寧ろ嬉しくて、『お
懐しい旦那樣』と立寄つて熟々(つくづく)見ると
その影ハ掻き消す如く失せて何物も殘ら

なかつた(文末)

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「萬朝報」 明治44年

明治44年7月24日 お化け長屋(九)初めて質屋を開業した

 「明治期怪異妖怪記事資料集成」補遺、「お化け長屋」。次に、若い夫婦が店開きしたものの…。

…續かなかつたのである。引

越して來てから丁度四年目の四月の末、
半四郎ハ不圖した風邪の心地で床に就い
た、最初ハ唯の感冒だと思つて居たが、
十日經つても、廿日經つても快い方に向はない、
垣根の卯の花が咲いて、五月雨
のしとしとと降る時節になつてハ、半四
郎の病氣ハ愈(いよい)よ重くあつて、ゴホンゴホ
ンと咳をするさへ苦しげである、醫者ハ
お俊を小蔭に招いて聲をひそめ、『あなた
に恁麼(こんな)ことを話したら、嘸(さぞ)お力を落しな
さるだらうと思つて、今迄に見合はして

居ましたが、…

「最後の宣告を下した。」 続きは又来月に。

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「萬朝報」 明治44年

明治44年7月23日 お化け長屋(八) 娑婆に出て来たばかり

 「明治期怪異妖怪記事資料集成」補遺、「お化け長屋」の続きです。
「青木彌太郎ハ、…、酒色に身を持崩して同氣相求むる青年等と徒黨を組んで、今日の秘密結社よりも、ずつと危險な團体で、白晝人を路傍に擁してハ兇刄を揮つて財寶を強奪し、婦女子を辱しめる…。彌太郎ハこれが故に屡ば獄に投ぜられた、…」
 この青木に財産を搾り取られた松浦新兵衛は、「單衣一枚と云ふ悲惨な姿で」

…行方不明となつた、

その後二三度、彌太郎の宅を訪ねて來て
無心を云つたさうな【だ?】が、餘り世話もして
貰へなかつたと見えて、常に彌太郎の無
情を憤つて居た、尾羽打枯らした新兵
衛ハ、その後何處の場末に憂年月を送つ
て居たが、知るものとてハ絶てなかつた
  ▽植木屋の老婆を絞殺す▽
明治廿八年正月廿一日、世ハ新年の春を
迎へて樂しい光りの滿ちて居る其黄昏頃
下谷區上根岸植木職石川竹次郎方へ一人の

曲者が押入り…

留守番の老婆を殺め、「衣類數點と現金三圓を奪ひ去つた、…、その犯人ハ誰あらう、あゝ松浦新兵衛の成の果て」、「裁判の結果、死刑の宣告を受け、間もなく絞首臺の露と消えた」。
「松浦家の附近に住んで居た人々ハ、全く彼の恐るべき百々恐塚を堀崩した祟りだと稱してゐた」。

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「萬朝報」 明治44年

 「明治期怪異妖怪記事資料集成」補遺「お化け長屋」、漸う怪事が始まります。

明治44年7月22日 お化け長屋(七) 塚の底から壷を掘出す

 連載六回で松浦新兵衛が次の家主となるも、二人の「惡差配人」の食ひ物に。この新兵衛が「人の恐れて近寄らなかつた百百恐(ももおそれ)塚」の「底に深く埋めてあつた壺を掘出し、その中から怪しい包みを取出して『魔を拂ふのだ』と稱して一炬に伏して了つた」。

…一種の神経

衰弱病であつたらしい、酒を飮み女を
買ふ點に於てハ、常人と少しも違はない
のであつた
  ▽第三の差配人青木彌太郎▽
新兵衛が恁麼(こんな)になつて居るのを知つて、
第三の差配人になつたのハ、彼の有名な
青木彌太郎であつた、彌太郎が幕末から
明治聖代にかけての八十餘年の生涯ハ
實に恐怖すべき罪悪の權化と云ふべきも
のであつた、其晩年ハ王子第一流の料理
店海老屋の主人として侠客的の餘生を送
り本年二月十八日老病で世を逝(さ)つたが、
彼が流離顛【眞+頁】沛(てんはい)波瀾重疊の歴史を讀めバ
鬼氣凄愴、人に迫るものもあれバ、憤恨

覚えず血涙を…

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